茶道・薫物(香道)の
歴史を探究する

お香の種類と歴史

「お香」と聞くと、お寺などで薫かれているものというような、少し古くさいイメージを持たれる方もいるかもしれません。しかし、お香は現代でも実は身近な存在です。例えば、夏場になると必ずどこかで目にする「蚊取り線香」も、実はお香の一種です。

そんなお香には、とても古い歴史があります。その起源は中央アジアに広く位置するミール高原であったと言われ、そこからインドに伝わりました。そして紀元前5世紀頃、仏教が各地に広まると同時に、お香も世界中に伝わっていきました。

日本最古のお香の記録は『日本書紀』に記されています。『日本書紀』には、西暦595年に現在の淡路島に流れ着いた大きな流木を薪として火に焚べたところとてもよい香りが一面に漂ったと記されており、これが香木を火に焚べて香らせるという文化の始まりとなったことが分かります。

こうして日本の歴史に登場したお香ですが、『日本書紀』には同時に、仏への礼拝としてお香を薫いたと記録されています。このことから、仏教とお香には関係性があったことがわかります。日本に伝わったばかりの頃は、お香と言えばもっぱら仏前で薫く香木のことでした。

時を経て奈良時代になると、宗教に紐つかない実用的な目的でもお香が活躍するようになります。

この頃に、香木に直接火をつけるタイプのお香だけでなく、常温でも香る「匂い袋」が誕生します。今でこそ観光地でも見かける匂い袋ですが、当時は防虫の役割のために重宝されていました。また、同じ頃に仏教の葬儀で行われる「焼香」の文化も誕生しました。今でも行われているこの焼香も、お香の一種なのです。

そして平安時代になると、ついに「楽しむためのお香」が誕生します。

この頃には自分の好みの香りになるように香料を調合し蜜などで練り固め、それを間接的に温めて香らせる「練香」が楽しまれるようになりました。この練香は、香りに合わせて和歌を詠むこともあり、やがてその香りの質と和歌の出来などを競い合う「薫物(たきもの)合わせ」という遊戯が広まりました。

古い歴史があるお香ですが、現代でも、仏様に手向けるお線香や夏場に使う蚊取り線香という形で日常生活に根付いています。観光地ではお土産としてかわいらしい匂い袋をよく目にしますし、お茶の席では今でも薫物合わせを楽しむことがあります。

こうして我々の日常には、身近な存在として色褪せることなくお香の文化が残っているのです。